第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
そうだ…。
ツッキーは汐里ちゃんとも友達なんだよね。
ってことは、てっちゃんとの関係も知ってる……よね?
「ねぇ、ツッキー。汐里ちゃんとてっちゃんて……」
「はい?」
そこまで聞きかけて、怖じ気づく。
やっぱりハッキリとした事実は聞きたくない。
「あ…えっと…、汐里ちゃんてどんな子?てっちゃんといる時にたまたま会って。すごく可愛い子だよね…」
「まあ…見た目だけは」
見た目だけ?ナニソレ?
「生意気。気が強い。可愛げがない。しかも僕にだけ。腹が立つ」
早口でそう言ったツッキーの顔を見下ろせば、色素の薄い瞳と目が合った。
「それが何か?」
「……ううん」
へぇ…。
すごく可愛らしい顔してたから、ちょっとイメージと違った、かな。
ていうか、今のツッキーの発言の方が気になる。
自分にだけそんな態度が気に入らないって、それ…。
私はコソッと耳打ちする。
「ツッキー、もしかして汐里ちゃんのこと気になってる感じ?」
「ハァ?」
「!」
そんな怖い顔しないでよ…!
綺麗な顔が台無しだよ!?
そっか…そうなんだね?
「好きな男の前と態度が違いすぎて。そういう女は気に入らないってハナシです」
好きな…男…。
「はぁ…。黒尾さんと梨央さんてちょっと似てますよね」
「……どこが?」
「そうやって人をからかうトコロ。上辺で本心を取り繕うトコロ」
前者は…今の私の発言が気に入らなかったってことだよね。
でも、後者は?
「汐里のことが気になるのは、黒尾さんと関係あるんじゃないですか?」
「ちょっ…!!」
何を言い出すのこの子は!!
私が慌てるのを見て、唇の端を綺麗に吊り上げてる。