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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】



南さんの実家の都合で、店が臨時休業になった日曜日。


私はデパートの特設会場に来ていた。
夏帆と花火に出掛けるための浴衣を買いに。
持っている浴衣は、高校生の頃に買ったピンク生地のものしかなくて…。
今の私には、正直もう似合わない。

もう少し大人っぽくて品も良くて、長く着られるものを。
そんな一着を求めてアレコレ試着中。

紺色とか藍色がいいかな、と思って着てみるけれど、柄次第で随分イメージが違う。
店員さんも巻き込んで、二着までには絞った。
でもどちらかひとつに決めようにも迷っちゃって…。

ああ…優柔不断。
こんなことなら夏帆と来れば良かった。
夏帆ならハッキリとアドバイスくれるから。




右、左、と目の前にある浴衣をひたすら交互ににらめっこ。

「あの、お好みかどうかわかりませんが…」

「はい?」

「お客様、こういう色味もお似合いだと思いますよ」

そう言って店員さんが持ってきてくれたのは、白地に薄青色の撫子の柄が描かれた浴衣。
紫色の帯も添えてくれていて、その色味も控え目な柄もすごく好み。

「わ…。素敵…」

これ、好きだ。
さっきまで迷いに迷っていたのが嘘みたい。
実際に着てみると、更にしっくりくる。
大輪の華やかな花よりも、こういう小さめの花弁の柄の方が合う気がする。
私、顔立ち地味だし。


「これにします!」


着てみて即決。
気に入った買い物ができた時って、本当にいい気分。
その撫子の浴衣を包装してもらう間、ルンルンとした気分で周りを見回した。


そこに目に入ってきた、一人の男性。
他にもお客さんがいる中、飛び抜けて背が高くて髪の毛をツンツン立てた…。


「てっちゃん…」


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