第2章 帰って来た日
おかえり、って嬉しい。ここが僕の居場所だって言ってくれているようだった。スケートリンクの冷たい氷の上が僕の居場所だった。1人で滑っていく。これまでも。これからも。今もそう思っているけど、長谷津のみんなは僕に帰る場所をくれる。
優子さん、……優ちゃんに会って、離れずにそばにいてを滑って、勢い余ったなにかを優ちゃんに伝えそうになったところでスケオタ三姉妹が来て、西郡とも会った。
スケオタ三姉妹はユラのファンになっていた。顔の。今でもスケートを続けてたらなあ、っていつも言ってるんだよ。と優ちゃんは呆れた声を出していた。
「ユラ、ここによくくるの?」
「滑りにくるよ。時々うちの子がせがむからダブルとか跳んでくれてる」
「そっか」
ユラはフィギュアスケートをやっていた。僕より小さい年からやっていたから、5年以上?でも、僕がスケートを始めた直後にやめてしまった。才能はあるのにどうしてやめるのか、と周りは引き止めたけど、他にやりたいことを見つけたからの一点張り。周りもしばらくしたら諦めて受け入れた。……僕は納得いかなかった。
「ユラくん、なしてスケートやめると?」
そりゃもうつきまとった。何百回と同じ質問をした。だってユラのスケートは上手で、綺麗だったから。家族ぐるみの付き合いがあったし、仲がいい僕なら本当のことを教えてくれると思ったから。それでもユラは何百回と同じ答えを告げた。
「自分がスケートするよりもっと楽しいことを見つけたから」
もっと楽しいことってなんだ。自分をこの冷たい氷の上に置いていくのか。スケートから離れてしまうのか。不安でいっぱいになって泣いてしまう僕を、ユラはいつも抱きしめてくれた。
「勇利のスケート、誰よりも見てるから、勇利より見てるから。俺のために滑ってね」
今でもユラがスケートをやめた本当の理由はわからない。喫茶店経営がやりたいこと、とかはさすがにないだろうし。あんな小さい頃からそれを見越してわざわざスケートを止めるのはちょっとおかしい。他に趣味もあんまりなさそうだし。親友でも知らないことがあるの、ちょっと悔しいなあ。