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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第9章 騎士達の凱旋


織田作に縋るように 涙を流す太宰が、そう弱く漏らした。



「……太宰…、お前のその孤独を埋めるものは、この世のどこにも無い。

お前は永遠に闇の中をさまよう」



そんなの、救いようがないじゃあないか……

どうすればいい


酸化する世界から、断つことは出来ないのか




「ねえ、織田作……私は、どうすればいい…?」

「嗚呼……、そうだなぁ…」



目を閉じそうな織田作が、呟くように言う。

自分の袖を掴む太宰の手に、手を重ねた。




「どちらも同じなら、佳い人間になれ…

弱者を救い、孤児を守れ。

正義も悪も、どちらもお前には大差ないだろうが…
その方が、幾分かは素敵だ…」




ぐっと最後に残った膂力で、太宰の左目を覆っていた包帯に手を伸ばす。


そしてその蓬髪を梳き、包帯を解いた。




「何故…判る?」

「判るさ……誰よりも。 何せ俺は…お前の友だちだからな…」


青白い顔で、織田作が微笑した。




「……判った… そうしよう」


太宰のその言葉を聞いてから、織田作が煙草を口に咥えた。

しかし、もう手に力は入らず、火を点けることは叶わなかった。




「………」


太宰が、無言でマッチを受け取り、煙草に火を点けてやった。



目を閉じた織田作が一息だけ吸い込んでから、手を落とす。



「……っ。……ぅ、」



落ちた煙草の煙が真っ直ぐに天に昇り、竜のようにたなびいて掻き消える。


目を閉じた太宰の瞳から、涙が零れ落ちた。
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