第9章 騎士達の凱旋
ジイドは長い話をした。
同時に俺も長い話をした。
5秒、5秒と時間は無限に引き伸ばされ、俺達は互いに互いの台詞を先取りし続けた。
現実の世界では、それは一秒にも満たない間だった。
「終わりの時が近いな」
引き伸ばされた世界で、織田作が言った。
「嗚呼……先ほどの爆発音、聞こえていたか?
向こうも終わった……」
ジイドが銃を向け、俺も銃を向けた。
互いに半回転した様は、まるで舞踏室で踊る人のようだった。
澄んだ音を立てて落ちる薬莢は拍手と化し、永遠の世界で静かに向かい合う。
「…サクノスケ……お前のような強さがあれば乃公も、
あるいは生き方を曲げて、軍人になる道を選んでいなかったかもしれないな」
互いの心臓に銃口を向け合う。
ジイドは防弾服を着ていない。
俺も、もはや使い物にならないほどぼろぼろだったから捨てた。
つまりこれで胸に弾丸を受ければ、それは致命傷になるだろう。
––––複数の異能力が干渉しあった結果、ごく稀に全く予想しなかった方向に能力が暴走する事が確認されているそうです。
いつだったか、まだ安吾がいた頃にそんな事を耳にした。
この引き伸ばされ、永遠にも感じるこの世界が、『それ』なのか。
異能力の特異点。
異能力者にとっての神隠し的存在意義。