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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第8章 暗香疎影





同時刻。

真綿が、自分が任せた副司令と その刃を交える瞬間。

三島と中也が、この二人への不安を吐露した瞬間。




歓談室の横のキャットウォークを突っ切り、
進んだ先は広大で天井の高い舞踏室になっていた。

100組くらいのペアがダンスを踊れそうな大広間だ。



古く黴びた天井には朽ちたシャンデリアが垂れ下がり、その膨らんだ電球を弱々しく明滅させている。



舞踏室の中央まで歩いた時、背後から声がした。



––––「一粒の麦、もし地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。
死なば……」


俺は即座に両肩に吊るした二挺の拳銃を抜いて、振り返りつつ声の方に構える。


その男はたしかにそこにいた。


銀髪に銀衣。

端正な顔の亡霊。


俺は、その言葉を引き継ぐ。



––––「死なば、多くの実を結ぶべし。」


男は、目を細めて笑った。




「『ヨハネ伝』第十二章二十四節。
見掛けによらず博識だな、サクノスケ」


そのバロック調の扉のまえに、ミミックの長……ジイドは立っていた。


立ち方一つに隙はない。

しかし構えもなく部下もなく、罠もなかった。




「……サクノスケ。
貴君の目は、乃公(おれ)と同じだ。」


銃を発砲した。

一発、二発。


どれも頭を振って回避される。

まるで、弾道を悟っているかのように。




「ようこそ、サクノスケ。乃公達の世界へ。」



ジイドが何の前触れもなく、俺と同じく二挺の銃を抜いた。

銃口を互いの額に向け合い、静止する。




「お喋りな男だ」

「ではお喋りはこのくらいにしよう」



俺の異能力である【天衣無縫】が、5秒後の未来を予測した。



5秒後にジイドが撃つ。

俺の眉間に一発、心臓に一発。



残り一秒。



「「行くぞ」」



地獄が開始された。





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