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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念




それは、いつどこで、何月何日に何をしたか……
事細かに刻まれた、今を生きる人類の履歴書である。



「パンドラ……否、正確にはパンドラの匣を持つ始源の女性。

それも、疫病、悲観、欠乏、犯罪、死––––
そういった類のものを封じ込める厄災の甕、パンドラの匣、滅びのピトスを開けていないイフのパンドラ」



彼女がこの世にいるということが地球の存続を裏付けており、
彼女が死んで、初めて地球は滅ぶことを許される。


当時幼少の三島が、『ピトスを開ける前の、失敗していない"もしも"のパンドラ』の神降ろしを試みた結果がこれだ。



太宰には判らない。


自分は三島と似通う考えを持つと思っていた。
彼とは愛の考え方が世界一つ分乖離しており、似ているようで全く違う。


だからその互いに蒸発した、吹っ飛んだ思考形式で
彼と頭脳をすり合わせ、競い合い、答え合わせをし、認め合うことが楽しかった。

たしかに太宰が望むのは、自分の予想を超えてくれる何かである。


だけどこんなことって––––



「……なんてことだ……。

つまり特務課には、何千年も前のパンドラの匣を持つ本人が、代理の義理で今も生きて学習し続けているってことかい?」



千歳––––そのままだと、三島は言った。
恐らく実際は千どころではない。五千年、否、下手したらもっと……。


三島由紀夫は本物の人でなしだ。



「嗚呼。僕が人でなくなったのは……

この一件の主犯であり、また神威に触れたがゆえに
彼女を成り立たせる装置として僕も組み込まれたから。


すでにピトスを開けて失敗した世界であるこの世に、ありえない世界線のパンドラを密輸した代償なのさ」



パンドラとは人類初の女性と言われている。

つまりそれは、言い換えるなら
どんな男にも順応、適応し、時には価値を堕とす。

万象様々の性格が作れた、あるいは無から生み出すことができたということだ。


必要だったのは『どんな性格でも受け入れてくれる雄』だった。

だから三島由紀夫は女性を尊び、尊重する。
何にでも親しみを持つ穏和な好青年だが、それを本質的に愛している訳ではない。



人ならぬモノ。何か人めいたモノ。


『お前は人間ではないのだ。
お前は人交わりのならない身だ。

お前は人間ならぬ、何か奇妙に悲しい生物だ』。







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