• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念




「でも、何もかも完璧にやってのけることは当時の僕には出来なかった。
七歳くらいだったからね……。

本人はすでに器に性格の表層すべてを譲っていて、本来の性格は喪失している。

……表層のは、ね」



それから、と三島が目を細める。



彼はいつだって人間に、まるで犬猫にでも向けるような微笑を浮かべた。
それを人は、なんて慈愛的で寂しげな男なのだろう、と自惚れにも等しく受け取った。


それもそのはず……
三島君本人にとっては彼らは皆、平等に下等生物だったのだ。



「パンドラの匣の未開封性……
また匣を開けてしまった史実の、失敗したパンドラはその後子供をもうけている。


つまり失敗していないということは、原因たる夫と出会っていないことになる。

その時点の処女性を保つために……
日本で少女の終わり、成人と認められる20歳で器の彼女は成長が止まる」



おいおいおい……。

太宰は頭痛に苛まれる側頭を抱えた。


三島は恐らく近い未来、この世を去るのだろう。
幼少期に視た生命の滅びに抗う手段を、その時点でできる限りに打ってこれだ。


自分が死んだあともこの世界が続きますように。
そう願っただけの行為。

彼が視ているのはこの先の『未来』ではない。この先の『結果』だ。


「……まずいね。思っていたより何倍も激ヤバ案件じゃあないか。

だってそれ要するに、正真正銘地球産じゃない、
違うテクスチャからの異星人と融合した少女が、政府内部にいるってことだろう?

厄ネタにもほどってものが……」



三島がすっと片手の指を4本立て、至極理性的で、穏やかな表情のまま言う。



「いいかい、太宰——4年後。今からあと4年後だ。僕と同じことを言う者が現れる。

このままでは生命が滅びる、とね。

……かつての大戦で異能者が戦争を変え、それに適応した国が勝利した。
そして今、異能テロ組織が世界の色を変えつつある。

具体的には僕たちのような、
特A級危険異能者を主力兵器として」



真冬……三島由紀夫……綾辻行人……

そして三島が突貫工事のように降ろしたことで、違う世界から来た凶つ箱の持ち主。
愛を知らない外道造りの生命体——……。



「……判った。三島君、君亡き後、その天涯孤独の箱は私が何とかしよう。

ま、私たちは友だち! だからね」




/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp