第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
「……ウーン、盛大な一方通行か片思いみたいですよ?」
太宰が笑う。
首領はきっと、三島君が存在として好きなのだ。
そばに置きたいと思われたのも、
莫迦にならない金を積んでまで連れ出したのも、三島君という人柄が好きだから。
友人として信じるに値する者だから、
首領の数少ない友達……
否、本当の意味での身内だと判定された存在。
それがエリス嬢と三島君か。
矢張り首領は厳しいなぁ……。
「これが三島君のデフォルトさ。
たとえこの世界の知性体とはまったく相容れない、脈絡の飛び過ぎた思考の持ち主でも。
ね?三島君」
だからこそ首領は、何があっても声高に主張するだろう。
幾つの三島でも、三島由紀夫は友人だと。
当たり前だ、真意の読めない森さんが
友人と語る存在ならば、どんな年だろうと友人は友人。
年齢なんて瑣末なこと、森さんが気にする訳もない。
この二名の間に横たわるのは、"絆"などという一言で済むような関係ではないのだから。
そんな関係が、羨ましいと純粋に思わされた。
「私と三島君は……古くからの友人だからね」
「ええ、もちろん」
頭のいい互いが、頭のいい互いを信じあえるようになれば、国家の参謀になど負けはしない。
およそ戦略にかけて敵なしだ。
二世を契ったのは真冬とだったとしても、
二人づれとしての存在を確立させている今の三島君は首領のそばにだけ侍る。
「森さんは……僕の友人だからね」