第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
「……真冬、立原のクイックドロウは目に見えねえ。
任せる」
「ふむん……ではそちらに行こう」
あくまでも中也が前、真冬は後衛。
立原と銀も同じ。
「えー……っと」
太宰がポートマフィア体捨流含め、
訓練に於ける規則を思い出そうとしたが覚えてない。
だから端折った。
「煙幕、催涙、閃光、音響弾はアリ。
炸裂弾と破砕弾、徹甲及び焼夷弾、相手の殺害はなし。
……なしって言うか、多分君ら避けるでしょ?」
「もちろん」
「ふむん」
四人はにべもなく頷いた。
訓練といえど相手が相手だ。
中也と真冬に対し、立原と銀のペアは多分一番戦いやすい。
広津さんが葉巻の火を消し、歩いてくる。
「では、双方良いか」
「––––」
「––––。」
立原がホルスターに手を伸ばす。
銀が鞘を吊るしたベルトに手を遣る。
中也が笑い、真冬が腰を僅かに落とした。
「はじめ」
広津さんの声の直後。
「––––ッ!」
瞬間、立原が喉元に迫った白刃の煌めきを紙一重で避ける、
だが振り上げられたそれが
わずかに頬に掠って朱線を刻み込んだ。
点々と赤い色の斑点が滴る。
否、今の初撃を避けられただけでも賞賛ものだが。
––––速い……!
––––はっや!?
それが判った瞬間に、銀が素早く身体を捻って前に出る。
地面は砂地、草原や市街のコンクリートよりも
摩擦値としてはほんの少し低め。
確か−0.15か0.16くらいだった気がする。
「雷光……」
落ちる雷並みに速いなど、まさに電光石火。
ただし光の速度に届いているわけではない。
立原のクイックドロウ、初速はたしか音速を超す。
速いのは立原だ。
撃ったと気付いて音が耳に届く前に弾が飛ぶ。
だから、トリガーを引いた指の動きで判断する動体視力がなければならない。
真冬の手合いだ。
「中也!」
「そっちは任せる」