第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
「なるほど……
対象の肉体的劣化をある程度回復させる、か」
「……我らに出来ることがあれば何なりと」
広津さんはどうぞと太宰、中也、真冬に席を示して、銀がそう言い下がった。
どうやら三人は訓練中だったらしい。
「ッぽいな。
真冬は二十歳越していたはず
だからおおよそ十歳くらいッつうことは……」
「半減させる、あるいは十年若返る、ですね」
中也が真冬を抱き上げた。
真冬は何も言わない。
されるがままにぐるりと見渡す。
大きな観覧席の眼下、地面の修練場では軽装の黒服男たちが体術や射撃の練習をしている。
立原の特技は二挺拳銃によるクイックドロウ。
銀は真冬に師事する暗殺者だし、
広津さんは【落椿】の斥力による体術。
つまり三人が三人、戦い方が違う。
「……訓練中だったのかや」
「そうですよ。
今日は上官の訓練ありませんでしたし」
上官、それぞれの幹部のことだ。
中也はどうにかなろうが真冬は––––
「……や、やりますか?」
「わたしたちが何故ここに出向いたと思っているのさ」
ですよね……
立原が頬を搔く。
太宰幹部、中原幹部、真冬幹部。
……豪華すぎる面子だ。
一介の構成員が見たら震え上がって卒倒するだろう。
「せっかくだから二人でいくか」
「二人っすか? 自分と銀で?」
中也が黒い革手袋をギュッと鳴らす。
チンピラみたいだ。
それか良くある月9の殺人犯。
「こちらは中也とわたしかな?」
真冬が得物を見遣った。
太宰は広津さんのとなりに座って足を組んでいる。
にやにやと中也に面白そうな笑みまでぶつけて、観覧する気満々だ。
「……中也、先ほどの訓練で大体今のわたしの間合いとリーチが体感的に判ったと思う。」
「ン? あァ、まあな」
今の真冬は平生の本人よりも素早さが向上している。
しかし子どもゆえに届かない部分もあろう。
真冬や中也であれば、その辺りは臨機応変に経験がモノを言うのだが。
「では……黒蜥蜴十人長、立原道造」
「同上。十人長、銀」
「ぬ、口上とは中々……五大幹部が一人、真冬」
「五大幹部が一角、中原中也」
「説却、やるか」