第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
中也に掴まれたのを逆手に取り、
払い腰の要領で真冬の手元が奔る。
脚を外へと払い、中也を投げた。
「んっ––––、やぁっ」
……どうやら昔から真冬は剣技も投擲も、あまつさえ徒手空拳格闘も出来たらしい。
相手を殺害したりどうこう、っていう武術ではないから暗殺者は使う場面が少ないと思うのだが……
そりゃ冠位取るわなと中也が空中で【汚れつちまつた悲しみに】を発動する。
木から落とされた猫のように低い姿勢で手足を不時着させ、中也が笑った。
「すッ…げ……ありゃ膂力っつぅか……遠心力か?」
「うむうむ……
小さいなりに力ではなく方向と限界を重視せねばな。
脚を掛けるまでは普通通りだが、己より体格の勝る相手をひっくり返そうなどと至難の業。」
真冬がくるりと逆刃を返す。
峰に刀紋があり、人を殺害するだけの長ドス効果はない。
まあ、殴打されれば多少はひどく痛むが(矛盾)。
「というわけで……わたしは昔から身辺武術を嗜んでいた故な。
子どもでなければ判らない事もあろう。
さ、もう一度」
……おっと?
真冬がその気になってしまったかな?
「ヘッ––––」
……ん、中也もやる気満々っぽいし?
「いくぜ真冬」
「ふむん……獲る気で来るが良い」
……この日……
ポートマフィア地下訓練施設の一部屋が半壊した。