第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
「ええ、でも残念だけどリンタロウの出る幕はないわ。
王子さまはお姫さまを見つければハッピーエンド、でしょ?」
結果的に、首領の言っていた友人とは
三島のこと以外あり得もしない。
彼は人間という生物ではないにしろ今は子ども。
人間を精巧に模したチャイルドモデルだとしても首領にそんなことは関係ないのだ。
……が。
今太宰と中也が真冬を甘やかしているように、三島とて紅葉とエリスお嬢様に構われている。
「そう思うでしょ? 王子さま」
「あー……っと、……森さん」
三島が言葉に詰まる。
子どもの彼に気遣わせては本末転倒。
「いいんだ……いいんだよ……」
首領は息を吐いて、五大幹部のひとり
尾崎紅葉が座る椅子の隣に腰かけた。
いつもなら、真冬が当たり前のように椅子を引いてくれるのだが、その子も今日だけは遊びを許したばかり。
いないことへの不便さを嘆くには早すぎる。
「……で、聞くところによると真冬まで小さくなったみたいじゃないかえ?
よもや平生のように仕事をさせたわけではあるまい」
紅葉が、花畑で遊ぶ美少女と美少年を見つめた。
「そりゃあ、今日だけは許したとも。」
「察するところ、鴎外殿も由紀を甘やかしにきたと見える」
紅葉が笑う。
笑って、紅茶を一口飲んだ。
「彼は子どもだ。
親という概念さえ知らない、チャイルドタイプ。
甘やかしてやるのは当然ではないかな」
「けども、私(わっち)らに先を越されては顔が立たぬだろうに」
もっともだ。
首領がふと笑い、彼を見る。
小さくて儚くて、大人の彼と矢張り似ている。
嗚呼……彼にもこんな時代があったのかと思わされた。
「では、三島君」
「なあにリンタロウ」
振り向いたエリス嬢と共に、三島が立ち上がる。
「エリスちゃんも一緒に、少し遊びに出掛けようか」