第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
––––まあ、結果から言うと、だ。
「森殿、首。
受け取るがよい」
「……色々突っ込んで良いかい?」
自分が誇れる暗殺者の彼女、真冬君が私に首級を差し出した。
うん、要するに生首だね。
ちゃんと断面処理をしたやつね。
問題はそこじゃあないんだ。
「……わたしに、何か?」
「いや……もう何も言うまい。
しかし君が失敗るだなんて珍しいねえ。」
私は机に肘をつき、箱詰された敵長の首を見遣る。
さすが真冬君、どうやら一回で切断したようだ。
敵の青白いガラス細工のような頬を、まるで愛でるように指先でなぞる。
「ちがう……っくもないかや……
こんな姿では何も言えない」
「いや、お察しするところ、殺害したあとに遅延効果としてかかったんじゃないかな?
だから仕事を終えたと思った瞬間に––––」
ガシャンッ……
私の言葉は続けられることがなかった。
いつもの、『大人の姿』の真冬君であれば、
首領がひと様と会話中に邪魔されたとあっては邪魔した者を折檻するのだが……
今は。
「えっ、あ、……え!?嘘ぉ……
真冬?」
「うっ……治かや…」
入ってきたのは、三島君のお見舞いを終えて
報告に戻ってきた太宰君と中也君だった。
そして開口一番に彼女の姿に愕然とする。
「……小ッちゃくなってる…」
「待って待って、よく判らない。
取り敢えず私が触れればいいね?
こっちおいで?真冬」
さしもの太宰君も中也君も、吃驚したまま部屋へと入って来た。
私と向かい合っていた、綺麗な子ども。
艶やかな夜色の髪に真っ白い着物……は、彼女が本当に子供のころに着ていたやつを急いで着付けたのだろう。
つまりだ。
「この姿は不便だよ…。色々なものが届かない。」
「だろうねえ。今や中也より小さいんだから」
真冬君に触れる太宰君。
がしかし、矢張り予想通り彼女は戻らない。
そう、目の前にいるのは
小さい頃の真冬君だ。