第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
沈黙。
「––––これは」
「––––っケホ」
お互いに何を話せばいいのやら、
否、仕事なのだから別に話さなくたっていい事だしむしろ
「「––––……」」
芥川と上橋という、上にしょうもない幹部を師事する部下は大変常識的に育つ。
「……仕事」
「はい」
「やる」
「しましょう」
……こんな様子を首領や太宰や三島が見ていたとしたら、さぞ笑ったことだろう。
とはいえ、それでも芥川や上橋まで笑うことは決してないのだが。
「……成る程?
『対象の肉体的劣化をある程度回復させる』……か。
人間なら若さという実に簡単なヤツなのだが、三島君はちょっと人間というには違うからね。
ロボットの錆でも取るという方がまだ妥当だ」
三島の幹部執務室、つまりはあの花畑に連れて来られる。
紅葉が天蓋に付いた遮光レースカーテンをタッセルで纏めて、近くのガーデンチェアに座った。
真冬がすっと椅子を引けば首領も座る。
「時期が来たら効力は切れるのだろうけど、それだと色々上層部的にはかなり不便だ。
特に、三島君は作戦脳だからね」
首領の漏らした一言に、
「ふむん……
なら、妾は少し席を外すとしようか」
「おや、出向くのかい?」
「まさか」
真冬が笑う。
「身内をこうも面白い事態にしてくれたんだ。
向こうにとて、それ相応にし返してやらねば割に合わないというもの。
なに、すぐに殺(と)って返ってくるさね」
……彼女のことだから、本当にすぐ敵の首級を獲って来るだろう。
首領が望めば首だって狩ってくる。
エリス嬢が両眼を望めば、真冬は死体から刳り抜くことさえ厭わない。
「ではの。
由紀、またあとで会おう」
真冬はそう言い、三島に掛けられた異能を解くべく最善の手段を切りに行った。
と、何やら出入り口の門で声がする。
「わっ、嗚呼、行くの?
気をつけて」
「任せるが良い」
真冬と入れ違いになって入って来たのは、太宰と中也だった。