第49章 好きになったもの。後編…中原中也誕生日 4月29日記念
「三島君ってさ……
隣にどんな女性がいても、
大体は『お似合いだな』〜って思わされるよね」
あんまりにも派手な人だと三島君の柔らかい雰囲気に負けるかもだけれど、大体はありそうだなって思える。
真冬が三島を抱きかかえれば、何やら
「?」といった様子で三島は為すがままに大人しく抱えられ、レース袖の中にその手は隠れてしまった。
真冬の肩口に頭をもたれかけさせれば、幼さの残るその子どもは目を閉ざす。
真冬の着ている白い着物に、
薄っすら入った雪輪模様は
三島のぶかぶかの黒い外套にも透かしとして刺繍されていた。
……絆、なんだなぁ…
とかそんなことを思いながらも、
彼がなぜいきなり退化––––
否、彼は人間ではないのだから、
少年としての形で発現されたのか……だが。
「…あの三島君、まるでぬいぐるみみたい」
「言うなら幾分綺麗な人形、だろ」
あの小さな三島君が真冬に抱えられ、何も判らず「??」って感じに連れて行かれると尚更…ねえ。
(齢七つの異端物、か)
「あー……あれじゃねェの?
一昨日か昨日あたりに任務で処理した組織の一員に、『対象の肉体的劣化をある程度回復させる』能力……だっけか」
「……そも、三島君に劣化ってあり得ないと思うのだけれど。
まあ、そういうものなのかな?」
そういうもんだろ、と返す。
異能力は奇跡の代行。
その保持者を幸せにするかしないかは、
全く以つて神のみぞ知るという領域なのだから。
「……私、猛烈に今、あの状態の三島君と話してみたい」
「今行けば間に合うだろ」
二人がさっと踵を返して、三人が去っていった方に足を向けた。