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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第48章 Re:birth…III







「うわっ、通電で言われたよりひどい有様じゃァないか!
乱歩さん、早く国木田君を運ばないと……」

「でも車に戻っている時間はないし救急車も来ない」


今やこの場は紛争地帯もかくやと言うほどに荒れ地と化している。


公道などところどころがへこみ、かと思えば断崖絶壁、信号や電信柱は終末よろしくなぎ倒されている。

国木田を治そうにも不衛生な野外でこんなに大きな傷口を晒したくはない。



「どうしたら……」


考える時間が欲しかったが、国木田の……仲間の命は少しずつ流れ出している。

地面に広がった赤い血だまりが何よりの証拠だ。



「場所はあるのですか」

「場所は、ある」


菜穂子が静かに問うた。

乱歩がうなずく。



「そう……そうですか。

それなら––––」


菜穂子がやおら右手を焦げ付く空へと掲げる。





「おいで……【獣の奏者】」



その呼び声と同じくして、空に碧色の文字帯が渦巻いた。



その渦中から動物……ヤマイヌかオオカミか、
獅子か虎か猫か––––とにかくそんな様な獣が

トラックの体高よりも大きな体躯を揺すって降り立つ。


とす、と立てた足音。
案外軽そうなのは音だけ。


組み敷かれて噛みつかれようもんならひき肉にされて即死である。




「この子が運ぶ。救急車より速い。
【獣の奏者】、振り落とさないようにして下さい」


【GUUUU––––rrrr……】


上橋菜穂子の保持する異能力、【獣の奏者】は異能生命体を顕現させる。

媒介または触媒に憑依させることが可能で、世界でも様々な形態の異能生命体が確認されている。


ある者はくじら、ある者は巨獣。
ある者は小さな女の子。



どれもこれも異能生命体で、太宰が触れれば消え失せる。



「……すまない」

「いえ」


菜穂子の【獣の奏者】に、国木田を二人掛かりで支えた与謝野女医と乱歩が獣の首の毛を掴んだ。

それを合図に巨獣は猛スピードで走り去る。





……説却、その場に残されたのは太宰治と上橋菜穂子だけだ。





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