第48章 Re:birth…III
「––––くに、きださ……、国木田さんっ!
ちょっ、えっ、国木田さん!?」
菜穂子が駆け寄り、地面にべったりと撒かれた血の散布具合に絶句する。
その瞳の奥が震えていた。
「……君、国木田君知っていたんだ」
「以前……借りを作ってしまいましたから」
医療用キットを黒い鞄から引っ張り出し、止血を急いで施してゆく。
その準備の良さに太宰がつい口を出した。
行き場のないこの感情を、何かに吐き出さねば駄目になると判っていたから、菜穂子に言った。
「何で持ってるの?私たちが負けるとでも?」
「いいえ。三島幹部……はお怪我なさる前に中原幹部が必ず庇うと思いましたので。」
しかし上橋菜穂子も、二年前とは違う。
今でも互いが互いを嫌いあって(菜穂子はただ太宰が苦手なだけ)いるが……
目が合うだけで震えるようだったあの頃の弱い菜穂子はもういない。
太宰が潰したとも言うべきか。
弱音を吐かなくなり、
膝をつかなくなり、
笑顔を浮かべる事がなくなった。
「で? 私が頼んだのは裏もちゃんと取ってきたよね」
「はい。
そして情報収集で得たものを三島幹部にも伝える––––こちらも滞りなく成されております」
太宰が菜穂子に言い出した命令(頼み)は、彼女にとある場所について情報を集めて自分に伝えること。
そして、得た情報は等しく三島にも伝えること、だ。
「早く国木田君をどうにかして治療しないと。
与謝野女医に連絡取れたから、そろそろ来––––」
「太宰ィっ!」
言ったそばから医療用鞄を片手に、こちらに走って来る女性と青年がひとり。
与謝野女医と乱歩だった。