第48章 Re:birth…III
マフィアが攻撃してこない。
というのも、社長が手刀で落とす人間を彼らも応戦しているからで。
「ふ––––」
とん、と社長の掌底が顎を捉え、空高く人体が舞い上がる。
落ちて来る体躯をキャッチし、横から襲ってきた身体を肘で払った。
身体の下段から、刃物の突きが放たれて社長が身を反らす。
昼の灰に煌めいたのは、
「料理包丁……」
蛤刃のそれで……
本来食卓で使われるべきものだ。
「着の身着のままで操るとは、何と外道な……」
その時。
どこからか、赤ん坊の泣き声がした。
「糞ッ……、襲って来る人を峰打ちは神経使う」
「殺しちゃうより丁寧にやらないとだからね」
とっさに背中を合わせながら(本当に合わせはしないが)、国木田がゴム弾の弾倉を確認した。
あと二倉しかない。
いかにパラベラムと同じ大きさだとて、真冬が持っていた武器の鞄はここにはない。
あの中なら軽く十や二十の補充用があるのだが––––……
「……何の声?」
「は?」
太宰がどこか明後日の方向を向いて呟いた。
決して国木田に向けて言った言葉ではないが、神経が過敏になっている国木田には聞き取れた。
「ああ、この声は赤子かな?」
「まさか……この連中の中に赤子がいるとでも?」
「判らない、でも近いよ」
二人で銃を片手に辺りを見回す。
即席のペアでも、今は頼れる仲間だ。
……今の国木田独歩のタスクバディ、ツーマンセルは真冬。
太宰と共闘という共闘をするのは初戦だったはず。
あの先の大火災で武装探偵社の入社試験に合格したとはいえ、胡散臭さ満載だった太宰の相手など気苦労が絶えなかった。
「太宰、見つけた!」
国木田が《鉄線銃》を腰に差し、地面に横たわる乳飲み子を抱えあげる。
無事だった。
少々汚れてしまったいるが、号泣しているのなら大丈夫だろう。
ほっと国木田が息を吐いた直後。
「国木田君っ! 直上、手榴弾!!」
太宰の声に上を見上げるよりも早く
赤子を抱きしめる。
人間の庇護本能はすごいと冷静に考えていた自分がいた。