第48章 Re:birth…III
福沢が三島の助言を聞き、すと息を吸った。
そしてその水銀色の目を開ける。
「––––皆、聞け!」
その鋭く勇敢な声音は、騒然とする空気を切り裂いた。
「この場に集う異能力者よ!」
マフィアの黒も探偵社の白も分離したままでいい。
けれど、今だけはこの好機を逃してはならない。
「己が互いを相容れぬ敵同士であろうとも、今は互いに背を預けよ!」
その場に居るだけで統制するという、ある種のカリスマ性とでも言おうか。
ひとつの異能企業として会社を成り立たせて行くのだから、彼がそれを生来から持ち合わせているのも何ら不思議ではない。
「真の敵は己と言う。
打ち勝つべきは、自らの憂懼」
そしてそれが––––
それこそが
彼の剣士の"異能力"である。
我らが武装探偵社社長、福沢諭吉
異能力名––––【人上人不造】
(ただし自分の部下にのみ発動する)
まさに鶴の一声だった。
敵も味方も即席に関わらずまとめ上げ、脅威に立ち向かうというのは……
太宰が、三島が、そして真冬が
『こうなればいい』と思っていた結果で。
水銀の視線が荒地を舐める。
「与謝野と乱歩、真冬が戻って来るまでここを死守し、各自防衛戦に努めよ!」
「はっ!」
「了解!」
襲ってきたのは民間人だ。
つまり、操られている?
「ち……、だから三島君は…」
太宰が拳銃をホルスターから抜き取り、国木田も《鉄線銃》を構える。
出来れば使いたくなかった。
––––でも……
「––––武装探偵社憲章」
国木田の言葉にはっとさせられる。
たしか、武装探偵社に加入した際に与えられる、いわゆる身分証に書いてある文言だ。
いくつか数字が振られていて、これ以外にもあるのだが……
「……『武力で以つて心身が脅かされた場合、
速やかに武力でそれを行使してきた対象を制する権利を有する』」
急迫不正の侵害を排除する、武装探偵社が掲げている典範。
「彼は言ったな。
行く末、軍警との異能力企業のあり方は変わると。
きっとそれの先駆けが、"異能特務課"だ」
太宰がうなずく。
それでも、彼らと目指すものは同じ。
「今日の平和を守る……!」