第48章 Re:birth…III
「中也」
「あン?」
三島の声に中也が止まる。
中也が革手袋を鳴らした。
「峰打ちでね。
一応生きているからさ、彼らも」
「チッ……わぁッたよ…」
そして、あろうことか––––
三島が三人をすり抜けて、一人で後ろの戦線に行ったではないか。
「えっ」
「あれっ」
中也と三島の攻防連携が取れているからこそ、
一人一人の脅威は綯い交ぜにされていた。
元より彼ら二人を分断させて戦うのが方針であったからこそ、彼らが自主的に一人ずつになってくれるのは都合が良い。
……違う。
彼らは……敵対する相手を変えたのだ。
我々から、急襲してきた謎の相手へと。
「待て!」
「何?」
国木田が三島の袖を掴んだ。
レースがはためく。
「お前なら……どうするのだ?」
唐突に問われた言葉に、しばし三島が「?」と小首を傾げて、さっきの会話の延長だと気付く。
そしてニッと笑った。
敵に向ける笑みじゃない。
「そうだね……
これはもう組織としてではなく、国家戦略としての範疇かもだけれど」
三島は国木田に言った。
たしかに歪な関係である。
事件など、軍警に頼めばほとんど無償で対処してくれるのだから、民間企業と対立気味なのも判る。
「僕なら軍警と異能企業を提携させるよ。
そこの間で武力と資金を流通させれば良い。
そもそも軍警は国民の税金で運営されているのに、万人に手を伸ばすのが筋違い。
本来、税金を納めている人たちのためだけに働くべきなんだよ」
でも、そうしたら境界線はどこにある?
「……ッしかし…そうなれば、軍警との在り方が変わる」
「うん、変わると言っているのさ。
けれど、今すぐじゃあない。
この先ゆるやかに崩壊する」
砂塵が舞い上がった。
数多の人影は、皆こちらに牙を剥いている。
「破綻は、避けられないのか」
「避けられないよ。
だって彼らは国全体の奉仕者。
利害関係が一致しているのは、『それ』だけだもの」
それ……?
国木田が手帳を携えた。
三島が背を向け、部下を下がらせた方へと統率しに足を向ける。
濃紺の瞳が一瞬こちらを見遣った。
「––––ヨコハマを、突き詰めて言えばこの国を
愛している、とね?」