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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第48章 Re:birth…III






「二人とも無事か。怪我は?」


社長の言葉に国木田と真冬が血を拭う。

これはぜんぶ返り血。



真冬の白い着物は赤く染まり、
国木田の淡色ベストも赤黒くなってしまっていた。



「ありません」
「ないよ」

ホッと息を吐き、前方を見据える。




この白煙は、真冬の異能範囲を上昇させるために国木田が撒いたものだろう。

真冬が異能力を使う際に
足元から出る濃い碧色の霧が、これと酷似した現象だからだ。








「やあ、こんにちは」




瞬間––––

煙の向こうから、穏やかな声。



耳にするだけでゾッと総毛立つ。




戦うための言葉じゃない。

争うための声音じゃない。



異様な安穏とした雰囲気に社長が刀を抜き、国木田も手帳を構えて太宰と頷き合う。


煙があったって判る。



これは––––囲まれている。


真冬が福沢の袖を引いた。



穏やかな声が告げる。


「人によって天国は違う。

けれど、行き着く地獄は等しく同じ。



––––さ、始めよう」





敵は幸いこちらに来ない。
クロスレンジの中だと判っているからか。

真冬が目を細める。




「この場に戦闘要員四人が掛り切りは些か不味い。

福沢殿、妾が周りを片付けよう……


貴殿は先に行かれよ」



「だが一人は」


一人は……何かあったとしても、フォローに行けないという致命的な欠陥、欠如がある。


しかしそれでも尚、真冬はニッとただただ綺麗に笑った。



嗚呼……

彼女がいれば、何とかなる。



本気でそう思わせる笑みだ。





「妾を誰だと思うておるのさね。

福沢殿が拾い養ったこの妾は、
ちょっとやそっとでは屈しはしない」


それに、と

福沢の伸ばした手のひらは、彼女の頭を慣れたようになでた。


なでなでなでなで––––と。




「独歩にも言ったけど……

そんなに心配であれば、妾への美辞麗句でも考えておくと良い」


その言葉に、ふと福沢が穏やかに笑う。







「そうしよう」






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