第48章 Re:birth…III
「ふ––––ッ!」
「ふん……」
国木田の異能力【独歩吟客】で顕現した畳み刀を、敵の首筋に叩きつける。
……勿論柄の部分で、だが。
国木田に向けられた拳銃に舌打ちした直後、
そこを真冬が相手の腕を払って鳩尾の活殺点を突く。
「妾に触れようなどと……十年早い」
絶妙なタイミングでフォローが出来あえる仲間というのは、戦場に於いて非常にありがたい。
とくに真冬は手練れだ。
あの社長と乱歩さんに昔から仕えていると聞く。
真冬は国木田と背を向け合い、刃の峰に左手を添えた。
真冬が得手とするのは立ち居合。
たしか一昔前に、真冬がぼやいていた政府殺しの暗殺剣士……も居合の達人だったと聞く。
「此処で椿のように
潔く散るが良い」
真冬が手をかざす、そのまま首根を掴んで引き倒した。
背中を叩きつけられた相手が嘔吐く。
––––『右足を前に出してやや膝を曲げ、
左足を膝が地面につくほど後ろに伸ばし、右手で斬る』……
暗殺剣客、孤剣士"銀狼"が
たしかそんな御触れの人物だったか。
真冬が片腕でとどめていた相手の銃把を切り上げ、空へとその金属の塊が打ち上がる。
「そこっ!」
「《閃光弾》!」
真冬の声、俺が榴弾を投げれば
地面をすり鉢状にくり抜いて、真冬が爆風を切り払った。
灰色の煙に、真冬の真っ白い袖と
国木田の金糸が激しく揺らめく。
「……ふむん…呆気ないものよな」
「そろそろ援軍が到着するはずだ。
今のうちにかすり傷は治すぞ」
国木田の言葉に、真冬が携えていた鞄から救急箱を取り出して絆創膏の箱を開けた。
真冬の黒瞳が消毒液を探す。
「んむ。妾は後でよい……独歩が先だよ」
「そうか。ありがとう」
つい、真冬の小柄な頭をふわりとなでた。
つい。
ついだ。
「……あ」
「……ぬ」
真冬の、煤のついた頬に手が伸びた。
「……妾をなでるのであれば––––…
女に見合う美辞くらい一言共に添えよ」
むくれる様は女の子そのものに見えて。
国木田がフッと笑った。