第48章 Re:birth…III
中也が何気なく欠伸を漏らし、耳元のワイヤレスマイクから手を離す。
横を見れば、三島も同じように幹部車両に寄りかかり
夜色の目を明後日へ向けていた。
説却と……
中也がトンッと車から背を離す。
「三島」
「嗚呼……初手で本力を投入か。
向こうは手早く片付けたいらしい」
三島が笑い、中也の隣にまで歩いてきた。
夕焼け色の髪とミルクティー色の髪が、遠い遠い爆風に揺らぐ。
向こうは、早々に主力を切ってきた。
短期決戦に持ち込むつもりだ。
「どうする」
「ん? 勿論、乗ってあげるさ。
こちらとてそれは本望だしね」
ただ、ここに三島由紀夫という
超長期戦こそが得手とする異能力者がいれば、
戦争の流れを操作するのは難しくない。
コツ––––と三島が、遠くに見える白煙を見据えた。
「やろうか」
「あァ」
紺色の目を閉じ、ゆっくりと開く。
いつだって直視し難い現実を見つめる双眸が、異能の緑青色に染まってゆく。
まつ毛の彩る影が、こんな血で血を洗い流すだけの戦場でちぐはぐした神聖さを醸し出した。
「うつつに天降(あも)りし転輪府君よ––––」
中也が時計を一瞥し、革手袋をギュッと鳴らす。
「高楼より かえりたもう」
三島のこれが効力を発揮していられるのは48分だけ。
然りとて、決着をつけるにゃ十分だろ?
三島がうなずく。
「【仮面の告白】」
だから、俺は不敵に笑って言うだけだ。
「行くぞ」
そして二人でゆっくりと、自陣の前線へと向かった。