第48章 Re:birth…III
真っ白い着物の袖が、風圧にばたばたと棚引いた。
それは、この二名が凄まじい速度で以つて敵陣に走っているから。
乱戦に慣れている真冬と国木田は、こういった遊撃など恐れない。
たとえ的にされる役目だと判っていようと相手が……共にいる仲間が、国木田であれば。
真冬であれば。
「事は一刻を争う。手早く片付けるぞ」
「ふむん……賛成だよ」
敵陣へと真っ直ぐ駆ける国木田が
手帳を内ポケットから取り出し、真冬も脇差と小太刀を抜いた。
この小太刀は社長が、あるじが所持するあの一振りの太刀の懐刀。
「異能力––––【独歩吟客】!」
万年筆を流れるように走らせ、《煙幕弾》と綴った。
煙幕には真冬の異能範囲を上昇させるためのシナジー効果もあるし、突入する際の
ある意味当たり前の行動。
「《煙幕弾》!」
「妾の異能……受け取るが良い」
地面に叩きつけられた《煙幕弾》がのた打ち、ピンコックを跳ね上げさせた。
ボッと盛大に爆発音が鳴り響き、道路に煙が充満する。
真冬がわずかに腰を下ろして
スッと息を細く吸い、止めた。
そして–––– 祝詞を奏上する。
それは開戦の狼煙。
異能力開帳の鍵詞。
「……疎影 横斜し、水 清浅……
暗香 浮動し、月 黄昏……」
真冬の足元から、
その華奢な真冬の全身にまとわりつくように碧色の文字帯が沸き上がった。
地面を、空間を、視界を揺らして余剰粒子が飛び散る。
「我らが武装探偵社の一隅、国木田独歩……」
「同じく武装探偵社がひとり、福沢真冬」
煙の向こう、数えるのも馬鹿馬鹿しいほどに黒い服の人間が見て取れる。
多勢に無勢の体現だ。
「死力を尽くして来るといい」