第47章 Re:birth …II
翌日、社長や国木田たちが
新聞で見るより早く、その異変が見て取れた。
明らかに––––街の人が、少な過ぎる。
「……ッこれは」
「……ふむん……今度は千人かや」
真冬が手にした新聞の見開きが、違法建設の廃ビルが爆発、崩壊したという"事故"。
そしてもう一つ、片面だけに取り上げられていたのがそれだった。
乱歩が真冬の淹れた緑茶を啜って新聞をチラと見遣る。
「これで合計千三百人が消えた。
そんなに大勢の人が匿えるような場所、ないと思うんだけどね……」
与謝野女医の姿が見えないことに、太宰が問えば
「与謝野女医は朝早く出かけた」とのことで。
「否……この地は坂島です。
何が起きてもおかしくないのなら、それは逆にすれば」
「何かが常に起き、流転している?」
国木田の言葉に太宰が言う、
しかしそれはどこかが違うと告げてくる。
その違和感は
「嗚呼……違うな。
起きなければいけない」
真冬の一言で合点がいった。
それだ。
社長の隣を離れて此方へ来た真冬が、
やっと薄っすらした笑みを浮かべて言う。
「何だと……?」
「昨夜自分そっちのけで暴れられたのが、敵さんは相当ぷっつん来たらしい」
乱歩がフッと笑い、嘲るように呟いた。
「短絡的思考。唯物論。
挙句この程度で片鱗を見せるとはねえ」
……何が言いたいのか、天才様の言葉は
常人の理解し得ない天の上で成り立っている。
しかし、真冬は当意即妙に汲み取れたらしく、
まあ当事者という事も手伝ってか
一度うなずいてから、どこかに出掛ける準備を始めた。
大きな手持ちの鞄に、救急箱と弾倉を詰めている。
「拠点は早々に移した方が良さそうさなぁ」
社長も息を吐いた。
「長くなりそうだ」
「ふふ、これで決戦前というのだから笑える話さね。
……この調子で決戦に興じるなど冗談じゃない」
この二人の間でしか判らない会話が淡々と進む。
乱歩はそれを耳に入れながら、新聞を畳んだ。
「国木田、太宰。
これから少し出るよ。準備して」
「––––え」
「……は」
「ふむん……準備はすでに」
乱歩が言い切って、真冬も乱歩の鞄を持ち上げた。