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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第47章 Re:birth …II







「––––三島君、か」


りん、と何処からか鈴の音が聞こえる。
確かずっと前もそうだった。

太宰の呟きに返すようになったその鳴子は、次第に夜に溶けてしまった。





––––数時間前、太宰と二人で大学に潜入していた与謝野女医が言った一言に、太宰はこう返した。



『……与謝野女医、もしかしてその由紀さんは
三島っていう苗字だったりします?』


…与謝野女医の知り合いだという
精神侵犯系異能力者に心当たりがあったから。




聴くところによれば、私の知る"彼"と

与謝野女医がいつも愉しげに話してくれる
"夢の中の彼"はどうも似ていて。





与謝野女医は、その彼のことを「由紀」としか教えられておらず、職場や
『夢の外』での個人特定につながる情報交換は絶対なし。

暗黙の前提条件だ。



しかしながら、この前のヨコハマ大火災で
たまたま偶然、偶発的に第三者の口から

由紀の苗字を聞いてしまったらしい。




「––––……」



……どうしたらいい。

太宰は考える。


どうすれば事がなめらかに、うまく進むだろうか。




そもそもの話、彼……

三島君がオモテに出ているということでさえ眉を顰めざるを得なかったのに。


彼がいまこの地にいる。


それを甘く捉えすぎではないだろうか。





––––「……太宰の知り合いが……
妾の言う『由紀』だって……?」


「その可能性がとても高いです。確信しました。
貴女と私は同じ人の事を言っている」

「……由紀が、」

与謝野女医が押し黙った、それを太宰とて表情を沈ませて待つ。



だって、最悪の相手だ。
味方につけられればきっと彼は鷹揚に助力してくれる。


だけど、彼がポートマフィアにいる限り
彼のそばに中也がいる限り、それはあり得ない。



「……ッ…ポートマフィアなわけが…」––––




彼に人間の良心はない。


それが示すのは、ひとたび敵に回れば
彼はノータイムで笑いながら殺戮を許容し、躊躇いなく実行してくることだ。





「どうしたら」


太宰の言葉に返したのは、





「治」

「真冬?おかえり」




社長と話を終えたらしい真冬だった。




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