• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第7章 好きになったもの。前編…芥川龍之介誕生日 3月1日記念


「僕の異能は、たぶん、真綿から聞いているはずだ」

「うん」



まるで自分の初恋を話すかのように
うっとりと____自分の惨状について語り始めた。


その大怪我を話すような顔じゃないんだけど…と
常人なら思うところだろう……。




「僕の異能は、精神操作系でね。
とても悲しいものだって言われるのだけれど」


三島は言葉に反して、微塵にも 憐憫を思っていない顔だ。




「愛する人に、殺される。
それを叶えてくれる力なのだと思うよ、これは。

『愛する者に殺される』異能だなんてね。」




具体的に言えば、誰しもの中にある、
愛情という枠の中の____

『狂愛』の枷を解いてつけこむことで叶う異能。




ゆえに、精神操作系 判定をされており忌み嫌われている。



人の愛情をいいように操り、破滅……否、
自滅に追い込む。




「重要なのは、殺されたい人……というか

僕の異能をかけられた人にとって、愛する人ってところだ」




そう。


相手が 名も知らぬ一目惚れの人でも
妻でも夫でも
母でも父でも
兄弟でも姉妹でも
親友でも恋人でも……



かけられた人にとっての『いちばん』の人が殺しにくる。

殺す側の人にしてみれば いい迷惑だろう。


それも『込み』での異能効果なのだが……。



穏やかな見た目には全くと言っていいほど似合わない力だ


まるで冬の深夜の星空のごとく澄んだ
あるいは無垢な紺碧の瞳が
理性的な輝きはそのままに揺らぐ。


尻尾のようにふんわりと結われた
ミルクティー色の毛束が風に揺れる。




「……三島君、女性には困らないのだろう?
なら____」


「やめておけ太宰……愚問だろ、ンなこたァ…」



太宰が 何とはなしに言うものの
中也が言葉を切らせた



「そうだね。
愚問も愚問。」




すっと三島は その目線を、愛しそうに

己の腕の中に収まる 彼女へと移した。




「…好きな人、って言っていたね。

僕には、世界でただ一人


真綿さえいれば……」




それでいい。



彼女を深く愛していたがゆえに

彼女に殺されたいと願った結果が、これである。



苦く笑った三島に続き

「じゃあ次は私の恋路」と

太宰が語り始めた……。
/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp