第46章 Re:birth …I
「……––––」
ばらばらと豪雨のように、鉄筋の混ざったビルの一部が落ちて来る。
ビル奥に埋め込まれていた水道管までもを破裂させたのか、ざぁぁああ……と
大量の水が重力に従って滝のように流れ落ちる。
……わざと壊したのか。
砂塵とともに、穴の空いた階下へと破片や窓ガラスの欠片が吸い込まれていった。
大爆発を起こした屋上は見るも無惨に一面焦土となり、紙吹雪のように鉄壁を崩す。
……恐るべきポートマフィアの五大幹部が一人の異能力。
あの感じはこちらを巻き込む気満々だった。
「……ふう」
フード付きの撥水効果は、
もうもうと上がる水蒸気や煙を跳ね除ける。
目を痛めることなく敵を退けたのだから……
今はこれで良いだろう。
追おうとすれば追える距離にいる。
でも、無理に後追いすれば後手に回ることになる。
それは……避けたいところだけれど。
見事に吹き抜けと化したビルの中階辺り、人影は外を見る。
野次馬がそろそろ集まって来る頃合いだろう。
「霧……
妾の戦法を、其方も使うか」
交戦途中に、屋上フロアの中央に誘導していたのは判ったから、相手が逃げようとしているのは明白だった。
フードの人影が小型の電子端末を手にし画面をタップする。
「……あるじ殿、終了した。
すぐに其方に向かおうか。
……それか、今ならまだ追えるが……」
《間に合うのか?》
フードが強い夜風にたなびく。
風向が安定しない屋外の高所で、毒粉は使えない。
己を巻き込む可能性が高いから。
「妾だけなら」
《そうか》
電話の向こう、相手は考える。
どうすべきか。
行きに、こっちの彼女が自分に言った事を思い出すのなら、ここは––––
2秒。
《……必ず、夜明けまでには戻れ》
力強い声だった。
それだけで、充分彼女の報酬である。
「うむ! 妾を誰だと思っているのさね」
ニッと笑い、ビルから飛び降りた。
これでいい。
全く相容れない土地から、ふたつの組織が突然やって来た。
そして自分が騒がせている事件の一方で、
その組織がその土地で衝突を始めれば、注目はそっちに向く。
一連の事件の犯人は気に食わない。
その隙を––––狙う。