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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第46章 Re:birth …I






「来るか」


中也が短く吐いた息の後、バッと後ろに退がる。


今の今まで中也の姿があったところに、
中段から下段までを垂直に一閃した刃があった。


ビュッと風が勢いよく切られる音がすぐそこで鳴り響く。



「小太刀だね」

「三島、退路を」

「判っているよ」


フードの人影が中也に係らっている間に、三島はふと屋上出入り口を見遣った。


階段。
駄目だ、やめた方がいい。

あれに階段の上という有利性を持たせる事になる。



人間の絶対の死角は直上だ。

中也の異能力であれば何とかなるけれど、視界が暗闇だと……ちょっとね。



「となると」


取れる最善は自ずと決まる。

中也を見れば、フードの人影に防戦しているようだった。
相手の技量は達人以上に相当する。

……あれが、歩きながら中也を攻めているあたり夜戦が得手。


不意打ちは暗殺者の基本だから、どちらが有利かなんて一瞬で判る。



でも––––






ちょうど、屋上の真ん中あたりに
人影を誘導できたところで、三島が中也に言った。



「中也、今っ」



「【汚れつちまつた悲しみに】––––」



三島を引き寄せ異能力を発動する。



紫紺の文字帯が中也に纏わりつき、ミシミシとビル全体が悲鳴をあげる。




「……––––!」

人影が息を細く飲んだのが判った。



……判った、のだけれど…

それでいてその反応だと


(不味いな)




ドォンと屋上の床が盛大に抜けて、階下へと大穴が開いた。






「撒くぞ」


床を抜く。

それが最善にして最短の逃げ道だった。





「中也、怪我は」

「無ェ」


こちらも無傷。重畳だ。




三島を抱えビルの破片を異能力で踏みながら、一気に外へと躍り出る。

中也の腕の中で、後ろを牽制しながらすっと手を伸ばした。



「霧……」

「僕がやった。行こう」



相手は追って来ない。

多分両者とも顔ははっきりと見られていないだろう。




もしまた邪魔が入るようであれば––––




「その時は、排除する」




三島もうなずいた。



クレバスとなったビルの階下に、人影を捉えながら。




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