第46章 Re:birth …I
「……三島、あの建物」
「ん?
嗚呼……坂島の郷土資料館だよ」
あるビルの屋上に到着した中也が、いったん三島を降ろした。
とん、と足が着く。
高所特有の強い夜風が、二人の髪を揺らしていった。
「寄るか?」
「いいかい?」
「あァ」
取り敢えず今は情報収集が妥当なところだろう。
実はただのテロだった、とかの無駄弾を打つはめになれば面倒だ。
もう一度三島を抱えて下へと降りる。
どうやら資料館の書籍は貸し出しをしていて、
そこらの図書館や役所に行くよりずっと良い。
というか、マフィアである二人としては
公務員のいる場所は避けたいところだった。
「今晩は。何かお探しですか?」
「嗚呼……、この地の由来が判るような書物はありますか?」
資料館の管理人だろう。
もう老齢の男性が、うなずき––––
だが、「ああ…、それが」と続けた。
「お昼に同じことを言ってきた人に貸した?」
「ええ……
金髪の美丈夫さんとえらい美人さんの二人組でしたよ」
図らずも先手を取られたというわけか。
三島は考える。
中也はそれを待つ。
……今回の三百人が一夜にして失踪した、という事件が表沙汰になったのはつい最近。
だとしたら、借りたその二人組は
前もって知っていたということになる。
……異能企業か。
そんな二人に、管理人の男性はやんわりと笑って言った。
「本はありませんが……
よろしければ、わたくしめが前々から伝えられてきた伝承ならばお聞かせ出来ます。
本にも載っていませんよ」
三島が、その言葉にパッと顔を上げた。