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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第46章 Re:birth …I






「わー、まるで太宰の運転みたい」

「舌噛むなよ手前ェっ!」


つかその表現だけはやめろ。



三島を肩に抱えて、夜の空を突っ切る。



とある昔……

中也は太宰と真綿、それから菜穂子とともに一緒の車に乗ったことがあった。


本当は三島と俺と真綿に菜穂子のはずだったが、

太宰と菜穂子の間にあった確執……
否、溝?を三島が何とかしようと、任務を太宰に押し付けたのだ。



車だって菜穂子が運転するはずだったンだが、それを太宰が鍵を奪い取り暴挙に出た。

有り体に言うと爆走。

あの時の車酔いは本当にやばかった。



「手前ェ、背後の警戒してろよ!」

「あはは、しているよ」


ビルからビルへと飛び移り、屋上からまた跳ぶ。



中原中也の保持する異能力、
––––【汚れつちまつた悲しみに】。

およそこの世全ての物質の、重力の方向を操作することができる。



中也は帽子を片手で押さえながら、片手は
三島をしっかり抱えて夜の空をビル伝いに走っていた。



中也の明るい髪と三島のミルクティー色が、月にあてられ金色に見える。

中也の視界の端に白いレースが入った。



前を行く中也の背後は、三島が見ている。

いまのこの二人には、何人だって攻撃出来ないだろう。




トン、とまた別の高層ビルの屋上に降り、走る。


「【汚れつちまつた悲しみに】」




言葉を継ぎながら空へと跳んだ。

視界が開ける。




「……綺麗、だね」



「…あァ」


三島の言葉に深い意味などない。

ただ単に、眼下の街並みを彩る光が綺麗だと思えた。
それだけだ。



「僕は…そうだな。
あまり、人間の営みに興味はないのだけれど。

でも……こういうのは、とても好ましく映るよ」



抱えている三島の体重は、中也の異能力で相殺されている。




その紺色の無機質な双眸に、

黄色い月が反射した。




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