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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第46章 Re:birth …I






「三島はさ」

「ん?」


琥珀色のウイスキーに浮かぶ氷は、今の状況そのものだった。


危うくて、不安定そうで、それでも簡単には溶けない。
三島の紺色が中也の青い目を見た。



まるで穏やかで、こんな事件の真っ只中にいるとは考えられないような優しさだ。




どちらかと言えば年上の女にめっぽう人気を博すのは、こういうときにふと見える

三島の『寂しそう』なのが刺さるからだろう。


……三島にそんなモノはないのだと知らないで。




「俺が太宰と双黒として組んでいたときより、今のポートマフィアは……

物足りねェって思うか?」


唐突、そんな言葉が妥当だと思えた。
三島が小首を傾げる。



「どうしてそんなことを聞くんだい?」

「手前ェが一番他人事な意見を聞かせてくれると思って」


他人事って。三島が笑う。

苦笑ではなく、それが自分に最適な場所であることを知っている笑み。



「じゃあ、中也は?

中也は今のポートマフィアが昔よりつまらないって思うのかな?

双黒として名を馳せていた時、君たちは
"比翼連理"だなんて揶揄さえあったんだよ」


初耳だった。


「比翼連理!?

ンなモンお願い下げに決まってンだろ、
何が良くて俺と太宰が、ンな……!」



仲睦まじい男女の恋人を表す言葉だ。

……まあ、大方、紅葉姐さんや首領あたりが言っていたのだろう。
部下がそんな畏れ多いことを、例え陰でだったとしても言うわけがない。



「良いんじゃないかな。
それが広まれば、中也に近付く女の人は減る。

今は昔よりつまらないかと中也は言ったけれど、僕はそう思っていない」



まるで雲の隙間から覗く虹みたいだった。
口元だけ、笑みのかたちにしていた。




「だってほら、君も、上橋も残したままだ。
……それに僕は、森さん以外の人について行く気はないよ」


ゆるやかな言葉。

そしてその内に隠れ潜む、
非人間性の無機質な冷たさ。




「だから、そんなこと言わないでよ。

ね?」



何やら意味深な雰囲気を醸し出すこの幹部二名様に、バーの老齢マスターが

とても言い出し難そうに、「済みません」と声を掛けてきた。





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