第46章 Re:birth …I
二人がいるのは、しばらく滞在するポートマフィア傘下の高級ホテル、その上階ラウンジである。
夜景が見えるバーは食事をするというより
飲みに来ている、が言い得て妙だろう。
「……本当に良かったのかよ」
言い出した中也の言葉は、三島が想像できる内だった。
菜穂子であれば新幹線を凌駕するほどの速度で相手を撒くことも可能だし、夜であれば隠密性が高い。
菜穂子を連れて来ていれば、この夜のうちに土地鑑を探らせることが出来たろうに。
「他の異能力企業と停戦中とはいえ、交戦は避けたい。
先の大火事でポートマフィアとて損失があったし……それに」
「それに?」
三島の続く言葉、きっとこいつはこいつにしか判らない形で菜穂子を渦中から遠ざけようとしている。
守る為に、遠ざける。
……ハ、難儀なこった…
「上橋は、一度武装探偵社という組織と戦っている。
顔を見られているだろうから軽率なことは出来ない」
三島の理性的な目が考えるように伏せる。
あの時––––
スクランブル交差点で中也と菜穂子、三島の知り合いである『晶』は共に共闘した。
利害の一致という面もあるのだが
三島由紀夫が彼女を知り合いとしてあの場に呼んでいた……というのが、なし崩しになったに過ぎない。
その件の『晶』とて、三島の話によれば、
何らかの異能力企業に所属していると聞く。
三島は勘ぐっている。危惧している。
……もしも、晶が武装探偵社の一員であったなら
三島と中也、菜穂子がポートマフィアということを教えていないとはいえど
菜穂子が戦ったという武装探偵社の奴の口からバレるのではないか、と。
「つまり三島は、『晶』に自分がポートマフィアであることを教えてないけど、
菜穂子が戦った武装探偵社員から漏れるンじゃねえかっつーことか」
「そう」
自分の損な立ち回りに、三島は内心で笑った。