第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念
「うわ……」
「ち……!」
バッと咄嗟に立ち上がり、
周りを見渡せど大人、大人、大人。
否。
大人というか、ゾンビというか––––
「……今大切なのは、倫理観とモラルと生死観の三つ。」
冷静な少年の声音に少女が反応した。
「倫理観は気持ち的にどうすべきか。
モラルは即物的にどうするのか。
生死観は、言い換えてしまえば……
質問された側の、つまりきみの主観。」
この少年は、見た目以上にこの世を生きていたり、あるいは時間でも超越しているのかもしれない。
ざっと二十年くらい。
「どうする?
ここでジリ貧で戦いながら探し物を発掘するか、
あるいは
この人たちを何とかしてからゆっくり発掘するか」
少年がそう言って手をやおら水平に持ってくる。
……予備動作?と少女が思った直後、
指が鳴らされて凄まじい勢いで文字帯が吹き抜けた。
開戦の狼煙はあげられた。
「選ぶ余地などないとみえる」
「そりゃあ……ねぇ!」
火蓋が切られる。
幕は切って落とされたのだ。
年端もいかぬ子ども二人に、相手は大の大人百人ばかり。
戦力なんて一見して判るだろう。
……それが、異能力抜きであれば。
「……倫理観と…モラルと、生死観……」
少年の言葉が蘇る。
呟いた少女に、少年はふっと笑みを浮かべた。
そう、殺す必要はない。
無力化すれば良いだけだ。
「こういうの、何て言うんだったっけ」
「背水の陣……さね!」
パッと着物の少女が、駆けた。