第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念
ゴールしたのは三島のかと思いきや、三島が弄っていたのは俺の機械。
能天気な白いマスクのキャラが、声なのか呻いているのかよく分からない音声をあげている。
「……あ。勝っちゃった。中也が。」
「停めてって言ったよね私?」
勝っちゃったじゃないよ。
太宰が呆れたように息を吐いたが、それは『仕方ないなぁ』のほうの呆れだ。
割とこの面子であれば、大体は流される。
三島がそういうのに頓着しないからッてのもだが、太宰の嗜好は真綿に引っ張られているし、
俺もわざわざ幹部様々に楯突くような真似はしない。
「中也、仕事。これよろしくね」
私幹部だから、と太宰が中也に
素手で捕らえた暗殺者を投げ渡した。
ゲェムに傾倒する幹部なんてものは認めたくもないが、この場での上司は太宰と三島。
「はァ……っチ、仰せの通りに」
大人しくなった暗殺者を米俵のように担ぎ上げて、俺は席を外そうとし––––
「ああ、中也。」
「あン?」
背後から三島の声が掛けられた。
落ち着いた、こんな一件なんてなかったかのような、いつも通り平生の声。
振り向いた俺の持っているそいつが、ビクッと身体を震わせた。
暗器の有無は、身体をまさぐることになるからやらなかったけど
手抜かりを挙げるならそれだろう。
本来、暗殺者が暗殺を強行するなんてことはあってはならないのだが……
しかしすぐそばにターゲットがいたのなら、話は別。
「おい、此奴……!」
「うん、起きちゃったかな?
だから、はい」
三島がゲェム機を片手に、一方の太宰は何か三島に話し掛けている。
多分さっきの文句だろう。
停めてって言ったのに、ところであそこの急勾配どうだった?ダッシュボード乗ると十割道外れるでしょ、とか何とか。
三島がそんな片手間に指を鳴らした。