第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念
「あっ、ちょっと中也!
何青い甲羅投げてくれたのさ!
せっかく一位だったのに」
「とか言ってる間に三島が抜かしたぞー」
……誰がこの場を、泣く子も黙ってまた泣き出す天下の五大幹部部屋だと思うだろうか。
まるで日曜の午前に集まる男子高生のそれ。
まあ確かに、年齢的には
太宰と中也は高校生、三島はぎりぎり入らないけれど。
つまり、これが……
彼ら本来の在り方なのではなかろうか、と中也はゲェム機を握る太宰や、笑う三島を見て思った。
…なんだかふつうに学校に行っていたとしても、大体はこんな感じに集束しそうだ。
とはいえ、別段こいつらも俺も、そんな無駄な感傷は要らない。
「あっ、バナナが前に飛んだ」
「というか中也、何放心して––––」
画面を見遣れば
暗くて鈍い色の12位をしめす数字、
否、それよりも。
「るの?」
太宰が相手の首を掴んだ。
突然のことに風圧で髪が揺らぐ。
一瞬後には、太宰の幹部執務室の
天井にあったダクト網が床に落ちて、金属音を立てた。
「……おっと」
「三島君、私の親機で一時停止〜」
がらーん…と甲高い音が鳴り響く。
ふっと何でもないように頷いた三島の、柔らかなミルクティー色が舞った。
「甘い。
私を暗殺したいなら、真綿くらいの実力者を差し向けて来なきゃ。
そのような生半可な出来だと、私に指先すら届かないまま……無惨に散って終わるよ」
どうやら、この幹部二名に準幹部一名という面子は少々予想外だったらしいが、
この期を逃すかと暗殺を強行したらしい。
太宰に首を掴まれてばたつく暗殺者。
当たり前だが太宰に往なされたのだ。
「……どうする?君、殺されたい?
それともマフィア式のやり方で殺されたい?
あるいは殺されたい?」
どっちにしろ死ぬンじゃねぇか、と中也は突っ込みたくなったが、
ふと画面の中を見れば
面白いことになっているものだから、何も言わなかった。
「うん、黙りは私基準で矢ッ張り処分……」
突然鳴った短いファンファーレ。
キャラが一位のボイスをあげた。