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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念







「よし、蟹準備万端!
中也ァー、三島君呼んできてー」

「チッ…」


ガスコンロなんて久しぶりに点けるな、と太宰が目盛りを捻った。


少々危なげない音がした気がしたが、
ガス爆発なら太宰的にはどんと来いだ。

一酸化炭素中毒というのも良い。


火花が飛んで、青い火が点いた。







太宰の幹部執務室にある革張りのソファに、精緻なレースがちらりと覗いている。

三島の外套のだ。




「三島、用意出来たから––––三島?」


ソファに横たわる姿は、言い表すならば
さながら『電池切れ』だろうか。


肩まで掛けられた外套の上から揺する。


––––起きない。

……起きない?



「寝てンのか…?三島」



三島は人間的な睡眠欲求がない。
というか、極めて希薄に設定されている。

加えてあの花畑に夜は存在しないので、三島は眠らないのだ。



そう、眠らない。


ならば……



「ずっと前……手前ェが髪を切った事件があッただろ。

俺はあの時から、手前ェのその行動が気に入らなかった。
手前が何の衒いもなく自分の一部を切ったのが、嫌だったンだと思う」


眠っているのなら、せめて夢の中でもいいから聞け。



嗚呼そうだ、俺はあの時からどうしようもなく嫌だった。

だから––––



「少しは自分を大切にしろ馬鹿野郎。」


逃げるために必要なンだとしたら、そういう時のために俺や太宰や、真綿がいるンだろうが。


……つーか手前ェが逃げを考慮するとしたら、大体俺らのことだって手前ェが考えてねェわけないンだよ馬鹿。



外套の端を規則的に揺らす三島の身体はあたたかい。

生物の温度だ。
人間の温もりに極めて近い。


あの時言えなかったことも、

女の夢をついばむ三島に
夢の中でなら言える気がしたのだ。


夢の中で––––











「えぇっとさ……そろそろ起きていい?」


…………。





「馬鹿じゃねェの!?」

「痛い!?」






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