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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念







「うーん、私ならすぐさま頭潰すけどなぁ」

「それは勝てるッつー自信あるからだろ……」

中也の展開した文字帯の中で、太宰と三島が
同じようなことを抜かしながら並ぶ銃口を見ていた。



「勿論。」

こつ、と低い音が鳴る。


笑った三島が一歩出て、中也に並んだのだ。



雁首そろえて並ぶ銃に安全装置はない。

撃てば弾が尽きるまで、こちらに金属塊がばら撒かれるだろう。



「無かったら得意の異能力撒いてでも逃げるさ。
僕は取り敢えず生き残ればそれで重畳だからね」


中也に太宰、三島の三人に対して敵は六十はくだらない。
戦力差はどうだか、しかし人数は圧倒的に向こうが上。



こういう時の三島が何をするのか、
太宰と中也には判っていた。


「耳塞いだ方がいい感じ?」

「うん。露払いはお任せを」



細く息を吸った三島が何かを唱える。
異能力の名を誦じたのだろう。


中也の碧銀色の文字帯に喰らいつくように

三島の足元から紫紺色の文字が沸き立った。




来る、と二人が耳を押さえる。

というより––––


これが成すのは、鼓膜の保護だ。




「––––……」


ぱちん、と軽い破裂音。


三島がおもむろに指を鳴らした直後、
もの凄い音を立てて窓ガラスが一斉に吹き散った。

きらきらとガラスの破片が床に刺さっては文字帯を映す。



部屋の中で衝撃波が出たというのに、
ガラスは外から中へと吹き込んでくる。



––––大気の震動。

指をただ単に鳴らしただけではさほど音も聞こえないし、ガラスが割れるほどの衝撃など決して生じないだろう。

ただそれを、三島の異能力【仮面の告白】は
ほぼ副次効果まがいの作用で補正する。



数メートル先の三島が発した音は、大気中でその空気の揺らぎを爆発的に向上させたのだ。



つまり––––信じられないことに……

音の衝撃に『酔った』。




「はい、露払いおわり。
鼓膜大丈夫かい?切れてない?」



「嗚呼……」

「うん、大丈夫。
にしても、それ便利だねぇ。」




愛する者に殺される異能力。

それは、対象の脳に直接影響する、いわば精神侵犯型。




瞬間的なバグが、事もあろうに

異能事象に押し流されているわけだ。





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