第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念
「……よし、これで裏切り者の始末は終わッたか」
「だね」
数ヶ月前のこと。
ポートマフィアが居を構えるヨコハマ港に、
ひとつの武装集団が形成されつつあった。
誰しもがポートマフィア内部から
金銭横領だの情報漏洩だの、色々やらかしてくれた挙句に命からがら逃げた者ばかりで。
その鼠たちの処罰を首領がしないはずもなく、
処罰というよりかは離反した
あくまでも『敵組織』にむけての制裁を加えることになったのだ。
「……三島君?」
「今まで目にした輩は総じて、組織内共通のバッヂを付けていた。
……ということは、"頭"は
別のものを付けている可能性が高いわけだ」
まあ、それはそうだ。
リーダーだと一目で判る方が都合良いだろうし。
「でも、それだと敵にも
リーダーここにいるよ〜って判るじゃない?」
「うん、だから出てこなかったんだよ」
太宰とて同じことを思っていた。
こと三島との頭脳戦に秀でた男だ。
まあ、この二人の内では競うという意味合いより
答え合わせでもするように、互いにすり合わせるのが面白いみたいだが。
「んー……まあいっか。
つまり、リーダーだという印があるにも関わらず、未だ本人が出てこないということは…
これから最後に戦うのは本人ということさ」
「何か色々ぶっちゃけた!?」
場所を悟られたくないのだ。
しかし顕示欲の強いリーダーは、
木っ端な部下たちとの違いを判るようにさせたかった。
ということは、残った本命が戦えば良い。
三島がそう言い切った直後、
見計らったかのように
白濁とした煙が通路をいっぱいまで充満させた。
吹きこぼれるような音を立てて、一気に視界が真っ白くなる。
「わぉ」
太宰が気の抜けるような声をあげた。
とことん緊張感のない奴だ。
冬の朝にかかる霧より濃い白は、隣も前も飲み込んでいく。
「目潰し……ッてことは急襲か」
このメンバーで肉弾戦が強みなのは中也のみ。
ということは勿論––––
「俺を狙うわけもねェよなぁっ!」
吼えた中也を中心に、異能力発動の合図である
碧銀色の文字帯と光の粒子が飛び散った。
空気が中也を恐れるかのように震える。
晴れた煙の向こう、幾つもの銃口が並んでいた。