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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念






「ああ、お帰り」

中也と太宰がきんきんに冷えた
太宰の幹部執務室の金属把手を押せば、

三島が笑ってこっちに来た。



「あ、これ蟹?」

「そう!手持ちで足りたから丸ごと購ってきたのさ」

持ったのは中也だけどね。




……中也は知っている。


太宰も三島も、スーパーなんて
殊に似合わない姿形をしているのに加えて…

そのまま一週間くらいは、ホテル暮らしが出来ンじゃねェ?と言える金額が財布に詰まっていることを。



「ほら見てよ三島君、毛蟹!毛蟹だよ!」

「へえ〜……、よく夜市に残っていたね。
ま、それは兎も角お疲れさま。」

魚拓取ろうよと太宰が言う隣で、三島は笑って受け流している。




……中也は覚えている。

隣で蟹の下準備をする太宰も太宰で大概だが、三島も人の事を言えない。
…まァ、言ッているところ見たことねェけど。




「三人で鍋なんて、本当に久しぶりだねえ」

「まァ、長らく三島が体調崩して面会謝絶だッたしな」


そう、三島はあの大怪我を
彼の暗殺者に負わされる前々から、身体が弱かった。



先天的なものと言うよりかは、三島の【仮面の告白】が
三島から人間性を奪ったがゆえの結果だろう。



かくして、三島は人間になり損ねた特A級危険異能力保持者として森鷗外に買い取られた。

…まあ、その事実は三島しか知らないのだが。




「髪、やっと伸びたね」

「ん?髪?」


太宰がどこか呟くように、三島の柔らかな髪をたぐり寄せた。

花の香りがする。

太宰の黒い蓬髪も負けず劣らずの柔らかさをしていたし、
髪色の明るさと長さで言えば、中也の方が三島より派手だったろう。


だがそれでも、エリス嬢やあの暗殺者の彼女、それから首領は三島のその髪をいたく気に入っていた。



陶器で出来た人形のように綺麗な顔だち。

幼い頃に見目麗しいという理由だけで
誘拐されたというその紫紺の瞳。



そうつまり、この花畑の紳士、三島由紀夫を作り上げる容姿すべては

そんな彼らにとっての安心薬でもあったンだ。





ところがしかし、ある日の任務でなァ––––





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