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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念






「……真綿が抜き身の刃なら、
あの子はきっとその鞘だね」


はあ、と白い息を吐きながら太宰が誰へともなく呟いた。

はあ?と中也が太宰を見上げる。



ここで見上げなければならないのが気に食わない。

太宰の痩躯のくせに長身で、手入れのなってない髪のくせに
女から何かと痴情の縺れに嵌りやすいのも気に入らない。



「子……ッて。

三島って人間的年齢で言うなら、
たしか俺らより二つ年上だろうよ。」



二人の手にはビニール袋。

……まあ太宰の方が中也より身分が高いので、
必然的に中也が両手に持っているわけだが。



「刀には反りがあって、その鞘とて
その刀に応じた物じゃないと納まらない。

つまり一対の存在と言えるだろう?」



鞘に合わせて刀を打つのではなく、
打たれた刀によって鞘は出来上がる。



つまり、中身である刀身もたいへん重要だけれど……
受け身である鞘こそ大切なのさ。




「真綿と三島のことか」


「うん。先日の閣僚会議のオークションでさ、
三島君と真綿が折半してあの子購ったじゃない?

上橋菜穂子。」




あァ……あいつか、と中也が瞳をふと逸らす。


未だ太宰のことは大の苦手らしく

出会うたびに向けてくる怯えた目線と声音と動作で、見ている方が憐れになってくる、アレか。




「たしかに人手不足かもしれねェが……
だからとはいえ、あの時の三島はほぼ即決だったよな」

「うーん……それは多分、上橋が異能者だったからだろう」




……は?

おい待て、俺は今何を聞いたんだ?

異能者?誰が?あの怯える女が?








「……うわ!何いきなり殴りかかって来るわけ?
意味不明なんだけど」

「…ッたりめーだろ、ンな事もっと早く言え!」



とはいえ––––
太宰とて、上橋菜穂子の異能力を未だ見たことがない。

訓練も体術も操縦を見ていても、上橋が異能者だとはまるで思えなかった。


異能無効化の私への当てつけかと聞いたら、最高潮に怯えた涙目で逃げられた。

あの後、「折檻は止してやって」と上司である三島にフォローさせたのも気に入らない。




「ふぅん……あいつが異能者ねェ…」


この時の中也と上橋菜穂子に、接点は全然ない。

肩を持つ事もないが、嫌悪する事もなかった。





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