第45章 泡沫の花 後半…三島由紀夫誕生日1月10日記念
「つうか何で闇鍋なンだよ、普通に鍋すりゃいいだろうが。
よくもまぁこんな寒ィ日にわざわざ面倒なこと考えつくな手前ェら」
「そりゃあそこはそれ、苟も幹部だから。
ほら、権力は存分に振るっておきたいじゃん?」
「最低か」
「うんうん。職権濫用したくない?」
「俺に聞くな」
太宰の言葉を皮切りに、三島まで加勢してきやがる。
五大幹部同士は仲がいいらしい。
というのも、一人一人が一個中隊並みの
戦闘力を持つだなんて揶揄されるくらいだ。
自分の才能…権力…そういうものについて来られる奴らの集まりだから、同族同士の結束力は高いのである。
「どうせマトモなもん入れないのがオチだろうが。」
「まあね。僕はほら、普通の人とは味覚が…
うぅん、舌が、かな?
とにかく違うから。
味に疎いからこそ闇鍋なんじゃないか。」
「まさにブラックジョーク!」
あははは、と笑う幹部二人は
ワケ判ンねェところで息が合っている。
「…っチ、わぁったよ。
だが、入れるモンは決めるぞ。」
「そこまで常識逸してないんだけど。私たち」
「不安過ぎるからだろ!?」
つい中也の本気のツッコミが入った。
なんだ、ここにはボケをボケと認識しているのに
わざと突っ込まない奴らしか居ねェのか!
……否。
––––中也には判っている。
…そうしないとやっていけないところにまで
そうでないと笑えない境地にまで立たされて
この幹部様々二人は、この暗闇を、
泥沼を生きているのだと。
…まァ、こいつら二人は
八割くらいは本気でボケてるンだろうけど。
どうにも疲れる幹部たちだ。
「闇鍋かあ。
真綿も本部にいたら良かったのに」
「嗚呼、まだ一年任務は遂行中だしね」
今回の、その件は……まるで
湖に張った薄氷の上を、立てたつま先で歩くかのように
とても慎重に、丁寧に、かの暗殺者によって進められていた。
これは、真綿がとある重鎮暗殺のために、
花嫁として潜入任務をしていた頃の話。