第44章 泡沫の花 前編…与謝野晶子誕生日12月7日記念
––––異能力。
それは、為るべくして為るもの。
在るべくして在るもの。
そうであるべきものだが、こうであるべきと決めつけることは出来ない。
曰く、自然の摂理である。
曰く、突然変異である。
曰く、夢になり得る。
そしてそれは
悪である。
とは、とある有名な政治家が
秘匿情報である特A級危険異能力者リストをみてそう吐き捨てた言葉だ。
「中也の【汚れつちまつた悲しみに】は、周囲の重力場を操る異能じゃ。
由紀の異能力に相反もしなければ相対もしない」
「まず、用途がちがいますから」
そう笑った三島に、中也が呟く。
鳴かない鳥。
動かない太陽。
足元に広がる花畑。
流れることのない雲。
ここは、現実ではない。
現実ではないと割り切った瞬間に、中也は目の前の三島を凝視した。
「手前ェ、どこから話しかけてやがる」
「えっ、あれっ、バレた」
そんな声がどこからか聞こえてきた瞬間、目の前が眩んだ。
一息に、一足飛びに
『寝覚め』を通過して『覚醒』にまで引っ張られるような感覚。
たとえるなら、朝の眠りが覚めるときに
なぜかふっと目が開いて、頭の中に眠気がない……そんな感じだ。
「おはよう。
そしてこんにちは、お二人とも」