第44章 泡沫の花 前編…与謝野晶子誕生日12月7日記念
「そう、ですね」
異質で異端じみた瞳。
まるで10年後も20年後も見通してしまうかのような…
嗚呼、それこそ。
私が欲していたものかもしれない。
これを政府に渡して堪るものかと思ったのだ。
きっと。
「ああ、思いあたることが一つあります」
「言ってみてくれ給え」
私の促しに、少年が何ら億劫がることもなく言った。
「それを、一般には友人というのではないでしょうか?」
それを聞いて、今度こそ笑い声が漏れた。
私が。
今更。
友人を?
「……友?私は、友を欲していたと?」
「気に障ったのなら、すみません」
「いや……そうだったかもしれない。」
そんな訳があるものか。
数分前、我が我欲に満ちた願いを
君に口にした。
あわよくば、この少年は利用出来るのではと
見限ったから。
「君は––––……」
だから、考えるだけでもぞっとするような言葉に
一蹴されたのだと理解した。
「……よく頭の切れる子どもだね」
「夢の狭間で微睡んでいるだけじゃないんですよ」
幼い三島君がそう子どもの声で言った。
声変わり前のいわゆる半鼻音、そして舌ったらずなものではないけれど。
足元で花開いた、季節外れも相当な
真っ白いポインセチアの鉢を、三島君が拾った。
「花言葉は『慕われるもの』です。
この花言葉をあなたに、森さん」