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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第44章 泡沫の花 前編…与謝野晶子誕生日12月7日記念






「じゃあ、早速お手並み拝見といこうかな」

そう言って、私は三島君に
一段と重厚そうな木の扉を示した。





「向こうの部屋にね、エリスちゃんという
現在の君より四つ程年下の女の子がいる。

エリスちゃんは今まさに就寝中。

君の力で、良い夢を見させてあげてくれないかな」



我欲に準じた願いを三島君に言うことは
どれだけ政府の反感を買うのか、とか

判っている。



けれど「この程度」と
どこか思ってしまう自分もいる。


この程度軽いものだ。

なにせこの少年は、異能力者の中の更なる異端。




頷いた彼が立ち上がって、エリスちゃんの寝室の扉の前に立ち、手をかざす。
流石に立ち入ることはしなかった。


(教養はある、か………)




じっと少年の様子を見ていれば、彼が薄く唇を開いた。




そして。



–––– 「 【 –––––– 】 ……」



目を閉ざす。
唇を震わせる。

声は届いた。
たしかに鼓膜を叩いた。

が。




何て言ったのかが、その言葉が
バラバラの鎖が如く聞き取れない。

ノイズのかかった声音というか。



目を閉じた三島君が、しばらく死んだように動かずに額を扉に近付けた。



そしてその紺色の双眸が初めて
私個人を一枚の絵画から切り抜いたかのように開かれる。





「––––は、」

私の口から、乾いた笑い声が漏れた。



なんだこれは。

愛する者に殺されるだなんていうから、どれほどおぞましく、
赤黒い気(け)に染まっているのかと思っていたけれど……




「花、かい?」

「花、です」


治した患者さんからもらった花束も、

花瓶に挿したままの、枯れかけた花もすべて



すべてが



幻想のように咲いているじゃあないか。







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