第44章 泡沫の花 前編…与謝野晶子誕生日12月7日記念
愛する者に殺される異能力。
何て––––、何ていう異能力だろうか。
どうしてそんな異能力が、この世にあるのだろう?
なぜ無慈悲にもこんなに小さな少年に宿ったのだろう?
何で、そんな力が生まれなければならなかったのだろう。
「その異能力で、今までに、だれかが目の前で亡くなったことはあるかい?」
私の言葉に、三島君が頷いた。
矢ッ張り、話せないのかな?
まあそれならそれでも、手段は幾らでもある。
ただ、この年代の子どもならば自己表現をしたがる年なのに…
(否、特A級危険異能力者を
ごく普通の人間のそれと一緒にしてはいけないか)
そしてふと脳裏をよぎった一つの可能性。
「うーん……、嗚呼、もしかして」
森邸に隣接する診療所には
先の大戦で負傷した沢山の病人がいる。
自分が営む黒と白の境界線。
いわゆる、中立地帯。
日々聞く彼らの断末魔。
痛い苦しいと嘆く夜の慟哭。
「夢を食べていないからかね?
なるほどそれは私の落ち度だった。
君に人間的リソースが無かったのか」
そう彼に言ってみても、矢張り少年は『?』と首を傾ぐだけだった。