第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念
「今やヨコハマは犯罪者の格好の楽園だからね……
先の大戦で治外法権は濫用されるわで治安最っ悪だから」
乱歩がハンチング帽を手繰る。
「そうさね……機能しているのは軍警と司法省の一部くらいか」
色々なもので汚してしまった着物を脱ぎ、真綿がたたんで各人に運んでおいた洗濯物の中から、シャツを取り出した。
洗濯は当番制になっているわけでもなし、
福沢と乱歩と真綿の3人分の洗濯物を一枚ずつきちんと分けてたたまれているのは真綿の厚意、とも言えるが。
「だからね、真綿……」
「ん?」
色々したあとは人恋しくなるのかな、なんて思いながら、乱歩は目の前の真綿に擦り寄る。
ふと薬のにおいが過った。
忘れてた。
真綿はけが人だったんだっけ……
「ごめん、身体大丈夫そう?」
「平気だよ、このくらい。」
真綿が肩口にある乱歩の髪をなで
そう言ってからゆっくりと、乱歩の首元に顔をうずめる。
それから閉ざされた双眸が映した光は
拠り所を探して見つけたかのような……そんな何かだ。