第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念
「ん、あれ。
真綿は僕のこと幾つだと思ってるの?」
「二十歳に行かないくらいか、と……
そういう事は違うのさね……」
乱歩がそれを聞いて口元を緩めた。
「うーん、いやさ、確かに幼く見られるけど
僕こう見えて二十一歳だよ?」
「……え」
待て待て。
だとしても、あの花畑の彼より一つ年上……と?
あの彼と己は一つ違いだった、
そしてあの双黒は己より一つ年下だ。
今思えば、双黒と花畑の彼は二つも違ったのか。
「わた、妾より二つも年上……」
「えっ。精々一つ違いくらいかと思ってたのに」
明らかになった真綿の年齢と名探偵の驚き。
乱歩の下で衝撃を受ける真綿が
んっと一瞬喘いでから、彼の肩を押した。
「よく年下に見られないか……?」
「見られるよー、大半の人に。失礼だよねぇホント」
ゆっくり身を起こせばずるりと下腹部が胎動するように震え、乱歩を離す。
離れた距離感を埋めるように
乱歩が真綿の顎をすいと上へ持ち上げると、その双眸に憐れみが過った。
「……真綿?」
「いや……無粋なことを聞いた。済まない」
面倒くさくてかわいいという評価に、
暗殺者故の『非があればすぐに認める』も加えるべきだ。
暗殺は、一時のうちに行うものではない。
何月かかったとしても、獲物しか手にかけないのが信条である。
標的以外を殺めるなど、あってはならないのだから。
そしてそこに、暗殺を邪魔するような人間関係もあってはならないのだから。
「最近はそういう人、減っちゃったからねえ……」
「ん?」
「悪いと思ったら謝るって人。」
乱歩の召し物を整える真綿は、すでに自身の身なりを整えていた。