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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第43章 月は綺麗ですか…江戸川乱歩誕生日10月21日記念





乱歩の翡翠色は、脅しなどという直裁的で
浅はかな手段で以つて真綿を丸め込むつもりは毛頭ないようだった……



「お願いっていうのは体の良い甘い言葉だよね。
だって実際は、押し付けているわけだしさ?」

「ん、……っは、ぁ…」

肩で息をするかのように、彼女が吐息した。

胎内に敷き詰められたモノは膨らみ、喉元からせり上がる浅い呼吸しか出来なくなりそう。




「だから、ねえ

命令。

僕のそばにいて」

きゅっと細まる瞳孔。

真綿を検分し見定める。




「稀代の名探偵様は、
今や横に穢れた者を侍らせるのさな」

「いや、僕的には君にそれを強いることはしないけどさぁ……
肯定の返事をしさえすれば良いだけのに」


真綿がここまで噛み付くのも珍しい、と
まだ若い頃の、子供っぽい乱歩はそんな風に考えていた。


数年経てばこの2人の間に絶対的な
信頼関係が出来るのだとまだ知らない故の愚かさだろう。



「じゃあこうしよう!


君は福沢さんに仕える。

僕はそこまでの気遣いは遠慮願うけれど、拾った者として君を師に仰ごうじゃないか!」


「……は?」

未だにお腹の中を占領されたまま、真綿が訝しげに乱歩を見た。


自信に満ちた綺麗な翠色の目
知りすぎているが故の真っ直ぐな心


真っ白な土地を塗り潰すことへの恐怖……
真綿は拒絶を露わにした。


悪として生きてきた真綿にとって、
純粋な善良の塊は少々、いやかなり……

それこそご遠慮願いたい代物。



「いや、それは……」

「その代わりに、君は軍師…あいや、社師?である僕を精一杯サポートするように!」

作戦参謀なら席(籍)空いてるよ?と
無邪気で悪戯な瞳が真綿に向けられる。

つい眉を寄せてしまいそうなほどの善性は
居心地悪くて好きではない



嗚呼、そうか



「––––……」


どちらにしても
どちらにせよ



もう、仲間なのか



「何、考えてるの?」


乱歩は端から確信犯であったが、相手が相手である。


逆に揚げ足を取られるような真似を起こすかもしれない確率は高かったはずだ。

途中から真綿だって意図的に警戒心を強めて言葉を選んでいた。




「面倒くさくてかわいいね」

「お言葉だが、年下に言われても」



真綿の言葉に

乱歩がん?と小首を傾いだ。





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